『三島由紀夫を巡る旅 棹友紀行』(新潮文庫) [ドナルド・キーン]
『三島由紀夫を巡る旅 棹友紀行』(新潮文庫)
またドナルド・キーンの著書のご紹介をさせて頂きます。
一周忌の時に、徳岡孝夫とドナルド・キーンの共著で『三島由紀夫を巡る旅 棹友紀行』(新潮文庫)が出版されました。発行日は、三月一日でした。
元はと言えば、三島由紀夫の死を機会に、別々に三島と友人でだった二人が知り合いになり、三島について語り合いながら主に三島ゆかりの地を旅をする、という本です。
父の親しかった友人で現在なお健在でいらっしゃるのは、私の知る範囲では三人か四人ですが、徳岡孝夫はそのおひとりです。三島が自決の前に知らせて市谷の自衛隊に呼んだマスコミ人はふたりいましたが、徳岡さんはそのひとりでした。もうひとりの方はすでに故人になられています。
この本は、昭和48年(1973)に中央公論社から『棹友紀行(三島由紀夫の作品風土)』として単行本で出版され、またその後に中公文庫から文庫化もされましたが、しばらく絶版になっていました。
今回新たに『三島由紀夫を巡る旅 棹友紀行』として新潮文庫から出版されました。
実は、徳岡さんと私とは父を通じて十数年前から存じ上げていますし、以前からこの本を読みたいと思っていたのに、ページをめくって読んだのは、恥ずかしながら今回が初めてでした。
読み始めると直ぐに、内容の濃さと面白さに、はっきり言って仰天しました。ドナルド・キーンの生の声が徳岡さんの問いに対して聴こえてくるようです。父からすでに聞いている話、また父自身がどこかに書いていることもありますが、初めての話も多く感激しました。数日前に徳岡さんに電話でそのことを話したら喜んでおられました。
父があとがきにも少し書いていますが、カセットテープに録音したものを徳岡さんが文字に起こして、文章化し、徳岡さんはご自分の考えなどを的確に、しかも深く掘り下げておられます。
何と言っても私にとっては、ドナルド・キーンの生の声を聴く思いでした。
今年は三島先生の没後50年年。父は生前、いくつかの組織から、今年三島先生について講演や原稿を依頼されていました。