ちょっと不思議な話 [ドナルド・キーン]
ちょっと不思議な話
ちょっと不思議な話かもしれません。
書斎の、ヴェランダへの出口に観葉植物がありました。
植物の名称は分かりませんでした。
すごく元気で一時は天井まで届いてしまい、おやおやと思っていました。
父は、「これは芳賀徹さんから頂いたものです」と言って大事にしていました。
芳賀さんが、家を改築されるときか何かに、30年前とか言っていましたが、この部屋をご一家にお貸しして、その時にお礼にいただいたそうです。
観葉植物ですからそんなに水をやる必要もなかったでしょうが、時々如雨露で水をやっていました。
父の最晩年、この植物も寿命に近づいたのか明らかに元気がなくなってきました。
父が亡くなった時には、かなり弱弱しい状態で心配でした。
その年の夏に、芳賀先生にお目にかかった時に、
「いただいた植物を父は大事にしていたのですが、最近はかなり弱ってきました」と言ったら。
「ではそのうちに買い替えてあげましょう」
と笑顔でおっしゃいました。
それから7か月後くらいに芳賀先生はお亡くなりになられました。
そして時を同じくして、この観葉植物は写真のような状態になりました。
しかし捨てるに捨てられず、写真の状態のまま、今日もいつもの場所に置いてあります。