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神奈川近代文学館の会報(2020年1月15日発行) [掲載記事・取材など]

神奈川近代文学館の会報(2020年1月15日発行)

かつて私も父の解説で、『弘知法印御伝記』三段目を弾語りしたことのある、神奈川近代文学館の今年1月15日の会報です。

例の「鉢の木の会」が洋行中の文芸評論家・中村光夫に宛てた寄せ書きが掲載されています。

父は、京都大学大学院の二年間の留学を終えてニューヨークに帰る時、1955年4月6日に吉田健一邸であった「鉢の木の会」に参加して、連歌の会に加わったようです。

それぞれ前の句を受けて、

”花の春の御馳走になる紅毛人かな”

”三井寺の鐘の音のみ届くらん”

の名句を二句残しています。

日本で生活して1年8か月ほどしての句です。

解説にもあるように、「鉢の木の会」のメンバーは、父の著書Japanese Literetureに啓発されて連歌に大いに注目したようです。連歌を現代に復活したのもドナルド・キーンの功績が大きいとも言われているようです。

Japanese Literetureは、『日本の文学』として今回中公文庫に蘇りました。紀伊國屋ホールの「黄犬忌」でもキャンベルさんが話しておられましたし、中公文庫の解説も書いて下さいました。

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『黄犬交遊抄』(岩波書店)について [ドナルド・キーン]

『黄犬交遊抄』(岩波書店)について

2月13日付けで発行された岩波書店の『黄犬交遊抄』についてお話させて頂きます。

若くて優秀な岩波書店の編集者の岩元浩さんから初めてお手紙を頂いたのが、確か2017年4月頃だったでしょうか?今手元にその手紙がないのではっきりしませんが。

その後、『弘知法印御伝記』のロンドン公演などがあり、初めて岩元さんにお目にかかったのが7月初めだったと思います。

岩元さんからの手紙と初対面で好感を持った父は、岩波書店から自身として初めての本を出して頂くことを、直ぐにOKしたと思います。

8月末か9月初めには軽井沢に、岩元さんに来て頂き、構成や掲載する原稿などについて話し合いがあり、それから後も二度ほどお目にかかって話し合ったでしょうか?正確にいつお目にかかってどんな相談をしたかは、過去のメールを検索したり、またはスケジュール表を見たりしないと分かりません。

いずれにしても大まかな構成や掲載する原稿についてはすべてではないですが父は了承しました。

そして父の没後、翻訳者の角地さんと教え子のジャニーン・バイチマン先生のご協力を得て、編集会議を開いて細かく相談し詳細を決め、出版に至りました。

『黄犬交遊抄』のタイトルは試行錯誤の末の決定ですが、この本に相応しいタイトルです。ドナルド・キーンの人との交流、文学との交流、人生における交流、あらゆる意味における交流が本の内容だと思います。

父にとって一番新しい原稿は岩波書店の『波』に掲載された「雨」と親友のテッド・ドバリーについてのエッセーだと思います。前者は2018年4月頃、後者は2017年夏に軽井沢で完成したと記憶しています。

他にも翻訳されて初めて掲載されたものもありますし、また既に翻訳され発表されていたものを角地さんが文体を揃えるために翻訳し直したものもあります。興味深い未収録の講演も含まれます。

いわば専門誌にしか発表されていなくて実際上は初公開というものも多くあります。

そういう意味で貴重ですし、ドナルド・キーン自身の意向をくんだ最後の著書ともいえる重要な本だと思います。

父もきっと天国で楽しみにしていたと思います。

装丁も岩元さんが、美しい黄色いクロスで手触りもとてもよく、父好みの品のよい装丁に仕上げて下さいました。

帯も幅広の特別な感じのするものです。

内容も装丁も素晴らしいと、きっと父も喜んだと思います。

まえがきは、父と長いつきあいのあった翻訳者の角地幸男さんが「キーンさんとの時間ーまえがきに代えて」として私の知らない頃の父を愛情をこめて書いて下さいました。

そして「いつも二人でーあとがきに代えて」を私が父の本文の後に22ページほど書かせて頂きました。私なりに父のことをかなり踏み込んで書かせて頂いたつもりです。

お手に取って頂けたら幸いです。

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